突然ですが、日頃、みなさんが人に会った時、「お元気ですか」という挨拶をよく交わすことがあると思いますが、無意識に「はい、何とか元気にやっています」といった返事を、よくお使いになっているのではないですか?そうです。それは、みなさんが、ガンや心臓病、脳卒中などの病気のことを、普段から気にしていることの表れだからでしょう。
日本では、約100万人以上もの方が1年間に亡くなっていますが、その三大死因は、悪性新生物、心臓病、脳卒中であります。そして、その中で最も多いのが悪性新生物 (以下「ガン」とする)で、実際、日本人の2人に1人がガンにかかり、日本人の3人に1人がガンで亡くなっています。
ガンは、とかく遺伝する病気だと信じられています。親や兄弟にガンが見つかると、「うちはガン家系だから…」などと思い込み、将来を案じるケースが多々認められます。たしかに、ガンは、正常な細胞が分裂する際になんらかの原因で遺伝情報のコピーミスが蓄積して発生する、と言われていますので、遺伝というキーワードと無縁ではありません。しかしながら、特定の遺伝⼦に先天的な異常があって発症するガン(遺伝性のガン)は、ガン全体のわずか5~10%にしかすぎず、残りの約90%は後天的な遺伝子異常で発生する、とされています。
それでは、どうして、遺伝情報のコピーミスという後天的な遺伝子異常が生じるのでしょうか?これには、生活習慣が大きく関わっている、ということが知られています。特に、「喫煙」や「飲酒」「肥満」「⾝体活動量の低下」「アンバランスな⾷事」といった5つの⽣活習慣は、ガン発生の大きな要因であると言われています。ガン発生が、心臓病や脳卒中といった成人病の原因と変わらないことに、おどろいている人もいるのではないですか?
このような後天的な遺伝子異常により、一見、健康そうな体内でも、1日に5000個ものガン細胞が発生しているそうです。それでも、みなさんがガンに侵されずに生活していけるのは、体内の免疫細胞(主にリンパ球)が監視していて、ガン細胞が発生すると、その都度、体内からガン細胞を排除しているからなのです。ただ、この免疫システムにも限界があり、監視をすり抜けて生き残ったガン細胞が体内に生着すると、やがて、目に見える「ガン」へと成長していくのです。
よく、「年寄だから、若い人ほどガンの進行は速くないよ」ということを耳にしますが、これにも根拠はありません。むしろ、生活習慣によってもたらされた遺伝子の異常は年齢とともに蓄積し、その一方で、年齢が進むに従い免疫機能が低下してガンへの抵抗力は下がりますから、ガン進行のリスクは高齢者ほど高くなることになります。つまり、ガンの予防は、単に生活習慣の是正だけでは難しく、老化予防や免疫力の向上といったことにも目を向ける必要がある、ということになります。